【シンガポール・印紙税】デジタル文書・電子契約書の印紙税について解説。

ビジネス上の取引において、双方の合意のもと条件を記載した契約書を取り交わすことは非常に重要です。

そして、多くの国において、このようなビジネス文書に対して印紙税(Stamp Duty)が課税されます。

近年では、PDFなどの電子的な媒体で契約書を作成するケースも増えています。

それでは、このような「デジタル文書」についての印紙税の取り扱いはどのようなものでしょうか。

今回は、シンガポールにおけるデジタル文書への印紙税について解説したいと思います。

デジタル文書への印紙税の取扱い

まず、シンガポールでは文書に対して印紙税が課税されます。

ただし、その対象は「不動産(Property)」及び「株式(Share)」の取引に関する書類に限定されます。

詳細は以下の記事をご参照ください。

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そして、シンガポールではデジタル文書に対しても印紙税が課税されます。

そのため、「不動産」及び「株式」取引について、デジタル文書を作成した場合は印紙税を納付する義務があります。

なお日本では、シンガポールよりも幅広いビジネス文書に対して印紙税が課税されますが、デジタル文書については「印紙税法の定める文書」を作成したことに該当しないため、印紙税が非課税となります。

ここで、重要な概念となる「デジタル文書」、「電子的記録」、「電子署名」の定義を記載しておきます。

デジタル文書(Electronic Documents)とは

1.取引に影響を及ぼす電子的記録
2.合わせて取引に影響を及ぼす電子的記録と物理的文書
3.合わせて取引に影響を及ぼす電子的記録と口語的コミュニケーションで電子的記録 で、電子的記録が取引を結論づけるもの

電子的記録(Electronic record)とは

電子的記録とは、情報システムに電子的手段によって発生し、コミュニケートし、受け取り、保存される、または一つの情報システムから他の情報システムへ移動される記録

電子署名とは(Electronic signature)とは

電子署名とは個人を特定し、電子的記録に含まれた情報に関する、当該個人の医師を示すために用いられる電子的方法のことである。
 

デジタル文書への印紙税(Stamp Duty)納付期限

印紙税の納付義務は、シンガポール国内の場合と国外の場合で以下の取り扱いとなります。

印紙税の納付期限

シンガポールで実行(Execute)された文書の場合:
デジタル文書は文書日付の14日以内

シンガポールの外で実行(Execute)された文書の場合:
シンガポールで受け取ってから30日以内

ここで「実行(Execute)」の解釈、つまりデジタル文書がいつ(When)、どこで(Where)実行されたかが重要となります。

この点、「実行(Execute)」については、以下の例示が公表されています。

「実行(Execute)」がなされた時点と場所

「実行(Execute)」は、電子的記録が取引を結論づけるか、物理的文書が取引を結論づけるかにより、以下の取り扱いとなります。

デジタル文書における「実行(Execute)」の時点と場所

1.デジタル文書が、「電子的記録」である、または「物理的文書」及び「口語的コミュニケーション」の一部を構成するものであり、電子的記録が取引を結論づけるものである場合は、電子的記録に電子署名がなされた時点(time)及び場所(place)

2.デジタル文書が、「物理的文書」及び「口語的コミュニケーション」の一部を構成するものであり、物理的文書が取引を結論づけるものである場合は、物理的文書に署名がなされた時点(time)及び場所(place)

たとえば、国外から不動産販売のメールがシンガポール居住者になされ、当該シンガポール居住者が受諾を申し入れるデジタル文書を送信した場合、デジタル文書は受諾申し入れのデータ送信時にシンガポール国内で「実行された」と取扱われます。

国外で実行されたデジタル文書を「国内で受け取った」とされる時点

シンガポール国外で実行(Execute)された文書の場合は、シンガポールで受け取った場合に印紙税の課税対象となります。

それでは、どのような状況をもって「シンガポールで受け取った」と考えられるでしょうか。

この点、以下の基準に従うことになります。

デジタル文書を「シンガポールで受け取った」とされる基準

1.デジタル文書がシンガポールで取得(retrieve)またはアクセス(access) された

2.電子的コピー(electronic copy)が機器に保存され、シンガポールに持ち込まれた

3.電子的コピーがシンガポールにあるコンピューターに保存された

さいごに

シンガポールにおいて不動産取引、株式取引をする際は印紙税に留意する必要があります。

そして、デジタル文書については、日本では非課税ということもあり、デジタル上で契約書のやり取りをすると印紙税を失念しがちですが、シンガポールでは課税対象となる点に留意が必要です。

実際に取引をする際には、現地の専門家にお問い合わいただくことをおすすめします。


当該情報は執筆時現在に公表されている法令・ガイドライン等を参照しています。本記事に記載された制度は、法令・条例・通達・税制の変更・改正等により、改廃が行われている可能性があります。従いまして、特定の目的利用及び専門的な判断にあたっては、会計・監査・法務・税務・労務等の専門家にご相談頂くようお願いいたします。本資料に基づいた行為(不行為)につき、一切の責任を負いません。


 

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