2022年2月に公表されたシンガポール予算案において、消費税にあたるGSTの料率が従来の7%から変更されることが公表されました。
2023年、2024年の2回に分けて1%ずつ引き上げられます。
- 2023年1月1日より:8%
- 2024年1月1日より:9%
変更の基準日をまたぐような取引がある場合、いずれの料率を使うべきか留意が必要です。
当記事では、シンガポールのGST料率変更に伴う、適用すべき税率について解説したいと思います。
シンガポールのGST(消費税)について概要を知りたいかたは以下のリンク記事をご参照ください。
日本において、消費税率の引き上げは何かと話題になりますが、シンガポールにおいても同様の税制があります。その名もGST(Goods and Service Tax)です。 日本の消費税と同様、シンガポールのGSTも、物品・サービスの付加価値[…]
適用すべきGST税率の考え方
原則として、GSTは請求書の発行または支払いの受領のいずれか早いタイミングで課税されます。
請求書の発行及び支払いの受領が基準日以前である場合、適用される税率は7%、基準日移行である場合は8%となります。
ただし、両者が基準日をまたぐ場合も想定されます。この場合、以下3つの時点により、適用されるGST料率を確認する必要があります。
・請求書の発行日
・支払いの受領日
・商品またはサービスの提供日
請求書の発行日が基準日の前か、後かによって、以下のように分類分けすることができます。
請求書の発行が基準日より前
請求書が基準日より前に発行された場合、「支払いの受領日」及び「商品・サービスの提供日」に応じて適用されるGST料率は以下のとおりとなります。
請求書の発行が基準日のあと
請求書が基準日よりあとに発行された場合、「支払いの受領日」及び「商品・サービスの提供日」に応じて適用されるGST料率は以下のとおりとなります。なお、7%の税率が選択できる可能性があります。
GST事業者への任意登録
以下のいずれかの基準に該当する事業者は、GST課税事業者として税務当局に登録し、GSTを徴収し納付することが求められます。
- 年間の課税売上高が1百万シンガポールを超える(見込みである)
- 以後12ヶ月の課税売上高が1百万シンガポールドルを超える(見込みである)
GST課税義業者である場合、商品やサービスをサプライヤーから購入した際に支払う消費税(Input Tax)は、自社の売上の際に顧客から徴収するGST(Output GST)と差し引いて納付することとなり、自社の(PL)コストとはならないため税率変更は会社の損益に影響を与えません。
一方、GST登録事業者ではない場合は、GST事業者から購入した商品やサービスについてGSTが上乗せされた金額がコストとなり、税率変更により事業コストが増加します。
そのため、上記GST課税事業者の基準を満たしていない場合でも、GST事業者として任意登録することができます。
2年間は登録を維持する必要があること、またGST申告の実務コストがかかるため、登録にあたっては税率変更の影響額を勘案する必要があります。
商品価格の表示
2023年1月1日より、全ての商品についてGSTを含んだ税込価格で表示する必要があります。ただし、当日に変更するのが困難な場合は、以下の2つの商品価格を表示することができます。
- 2023年1月1日以前の7%GSTを含んだ価格
- 2023年1月1日移行の8%GSTを含んだ価格
また、顧客の誤解を防ぐため、商品価格を変更する場合は、2023年1月1日に変更された旨明示することを推奨しています。
さいごに
多くの取引に関わるGSTの変更は、事前に入念な準備が必要となります。
税務当局からは、GST料率の変更に向けて以下の事項を準備することを推奨しています。
・会計システム、請求システムの更新
- 店頭レジの更新
- 商品価格の表示
- 従業員への周知及びトレーニング
- 契約書の見直し(GST料率の記載)
- GSTの増額について顧客への連絡
GST税率の変更について万全な準備をし、2023年1月1日からの新年に備えましょう。
当該情報は執筆時点に公表されている法令・ガイドライン等を参照しています。本記事に記載された制度は、弊法人作成後、法令・条例・通達・税制の変更・改正等により、改廃が行われている可能性があります。従いまして、特定の目的利用及び専門的な判断にあたっては、会計・監査・法務・税務・労務等の専門家にご相談頂くようお願いいたします。本資料に基づいた行為(不行為)につき、一切の責任を負いません。