突然、海外赴任をすることになったが、外国人のマネジメントがわからない。成果が出せるか不安。
海外駐在を任命される多くの会社員が考えることではないでしょうか。
海外駐在をする中で、一生懸命頑張っても結果がついてこず、やむなく帰任となる社員の方も少なくないと聞きます。
私も東南アジアの国へ日本の会社から海外赴任した経験がありますが、文化の異なる環境の中でチームワークを醸成し、成果を出すことは本当に難しいと体感しています。
それでは、海外赴任で満足する成果を出すにはどうすればよいか?
この問いに答えてくれる書籍が「日本人が海外で最高の仕事をする方法」。
著者はソニーで9カ国の現地社長などを経験し、現在は海外ビジネス向けコンサルティング事業を経営する糸木公廣氏。
本書は、著者の9カ国における海外赴任の回想録となっており、各国での実践と教訓をまとめた内容となっています。
著者の9カ国での経験はまるで映画のような起承転結に富んでおり、最後の2カ国であるベトナム・韓国での活躍はソニー本社から社長賞として表彰されるまでの結果を出しています。
その実行力とその経験を深掘りして抽出した知見は、これから海外赴任する日本人の後進たちに非常に有益な内容であり必読の書です。
当記事では、本書の概要について紹介したいと思います。
本とは、著者がその知見やノウハウを惜しみなく発揮する知の結晶。 何か新しい事業を行う場合や、新しい場所に赴く際に、先人の知恵を学ぶことが出来る、素晴らしい宝庫です。 当記事では、シンガポール、東南アジアに在住する方、事業を起こ[…]
海外ビジネスで最も大事なこと
海外ビジネスでもっとも大事なこと、それは「ビジネスは『人』が行うものだ」、ということを理解すること、と著者はいいます。
つまり、「人志向」。
この考え方で、海外で楽しく効果的に成果を上げることを本書は実体験に踏まえて説明します。
海外赴任が失敗する場合、言語や文化・慣習の違いからうまく行かなかったという説明がされる場合が多いですが、実は基本的な「人」への接し方に原因があった場合も多い。
とくに日本は、均一性・同一性が高い国であるため、「異なるもの」に向き合うことに慣れていません。
ところが、現代は価値観や考え方が多様化しており、イノベーションや新しいソリューションを生み出すためには、「異なるもの」を取り入れていく必要があります。
自分の心の窓にカーテンを引くのではなく、オープンにして自分を見せることでで言葉の壁を乗り越えて相手と親近感や信頼を築くことができる、と筆者はいいます。
著者が海外赴任中にみせた異文化対応力
このような「人志向」の海外事業において、筆者が実際に行った活動が参考になります。本書で記載されたエピソードのいくつかをここの紹介します。
・インドでは、現地の代理店社長から日本に帰ってくれと言われるも、マニアックなインド映画通となって現地に溶け込み、インド映画事業を立ち上げる
・ルーマニアでは、全社員に自宅用ストーブを送って、信頼を勝ち取る
・ルーマニアでは、あえて障害者を採用することで社内の活性化に成功
・ヨーロッパでは、欧州全体の販売管理システム導入を任されるも、機能しない大失敗。ただ、そのあと真摯にしんがりをつとめたことが評価され、栄転。
・ベトナムでは、発音の難しい現地語を克服しカラオケで社員の心をつかむ。
・韓国では、現地のマニアックな料理通として大手経済新聞の一面に取り上げられる。
・韓国では2ヶ月にわたり200人以上の若手社員と30回の飲み会を開催、文化的に目上の人には意見しにくい韓国で、若手から貴重な意見を入手し、データベース化。
このようにエピソードを並べてみると、別に大したことではないようにも感じます。
ただし、新しいことを文化の違う外国の地で新参者が行うのはなかなか勇気がいることですし、慣例を重んじる日本企業においてはなおさらではないでしょうか。
このような、地味だけど現地の人の心に寄り添う一つ一つの活動が、大きな成果につながるのだろうと感じました。
海外ビジネスのプレゼン極意
筆者が本書で述べている「現地志向に基づいたプレゼン術」が参考になるのでここに紹介したいと思います。
●現地に関連するおもしろい「つかみ」から入る
●冒頭やまとめの部分ではなるべく現地の言葉を使う
●伝えたい内容をシンボル(象徴)や比喩にして、絵やアイコンを使って話す
外国人が自国の文化や言葉を使ってくれているのを見ると一気に親近感が湧きますので、有効な方法と思います。
また、文化的な文脈や言語が違う海外では、文字ではなく絵やアイコンを用いてわかりやすく話すことを心懸けることが大切ですね。
さいごに
どんな国でも、そこに目を向けてこちらが微笑めば、必ず微笑み返してくれます。
筆者が文中に述べている言葉です。
確かに、こちらから好きにならないと向こうも好意を寄せてはくれません。これは日本人だろうが外国人だろうが同じと思います。
海外赴任中は慣れない環境の中、多くのストレスがかかりますし、本社も海外赴任者の苦労は真には理解できません。
そのような環境の中、やはり意識すべきことは「現地の人と前向きに心を通わせること」、そう本書には教わりました。
また、筆者は、グローバル企業・グローバル人材について以下のような意見を述べています。
望ましい「グローバル化」とは、単に一つのものを共通化しグローバルに広げることというより、多種多様なものを包括し、国ごとの違いを受け止めた上で、うまく適合させられるように調整していくプロセスだと言えるでしょう。均質で画一的な企業ではなく、現地最適化のプロセスをうまく全社的に実現し、豊かな多様性を備えた企業こそ、グローバル企業たり得るのではないでしょうか。 その先兵として、現地志向を持って現地での最適化を模索し、多様性と向き合うこと。それが、グローバル人材として世界で働く人には強く求められると思うのです。
海外で活躍することを目指すビジネスパーソンは本書から学ぶことは多いのではないでしょうか。
特に大企業から海外駐在する会社員には必読の書と思います。
ーーー目次ーーーーーー
序章 どこの国でも相手は人
第1章 現地に飛び込む
第2章 「違い」を活かす
第3章 逃げずに向き合う
第4章 文化を知り、人を知る
第5章 自分を見せる
第6章 誇りと喜びを育む
終章 異なるものに出会う意味
海外での事業成功には、その国の文化を理解することが重要です。 相手の文化的な背景、習慣を理解しないでビジネスをしても相手を怒らせるだけだし、逆に外国人が自国文化を尊重していることを感じれば、好意をもって接してくれることには間違いあり[…]