2021年度 ASEANのデジタル経済に関する調査報告書。

シンガポール政府の投資ファンドTEMASEK、戦略コンサルティング会社のBain&Company及びGoogleが、調査報告書「e-Conomy」を発表、ASEANのE−コマースとデジタル経済に関する現状と未来について詳細に分析されています。

本レポートは2016年から毎年公表されており、6年目の2021年はサブタイトルを「Roaring 20S The SEA Digital Decade (狂騒の20年代-デジタルの10年間)」とし、今後10年でデジタル化が急速に進行する始まりと位置づけています。

本レポートは130ページの大著ですが、当記事ではASEANのデジタル経済のトレンド及びシンガポールに関連する項目を中心に紹介したいと思います。

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ASEANの2021年度デジタル経済の状況

パンデミック後デジタル消費人口は60百万人増

デジタル消費は東南アジアの生活様式として根付いてきた。パンデミック後からデジタル消費を行うようになった人は60百万人に上る。

また、パンデミック前からデジタルを利用していた人は、平均して4つの新しいデジタルサービスを消費するようになっている。

(source: E-Conomy 2021)

デジタルプラットフォームが浸透

このような消費者行動の変化が、デジタルビジネスの隆盛につながっている。収益性が最大の問題ではあるものの、ほとんどの人がデジタルプラットフォームをポジティブに捉えている。

3人に1人は、デジタルプラットフォームなしにはコロナ下をサバイブすることができないと考えている。

(source: E-Conomy 2021)

25年には2倍超へ

ASEANのインターネット経済は2020年も底堅かったが、2021年度もさらに加速し、取引流通総額は1700億ドル以上となった。

E-コマース、フードデリバリー、フィンテックが依然として主要な成長ドライバーであり、2025年までには2021年度の2倍超となる約3600億ドルに達すると予測される。

(source: E-Conomy 2021)

ASEANへの投資も流入

強力な成長性、見通しの明るい出口戦略、好意的な規制により、かつてないほどの規模でグローバル資本がASEANに流入している。

ASEANへの投資は2021年第1四半期で2020年度の実績である115億ドルに達している。E-コマース及びデジタルファイナンスが中心であり、今後も投資を引きつけると予想される。

(source: E-Conomy 2021)
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シンガポールの2021年度デジタル経済の状況

ASEANで最も高いデジタル利用率

シンガポールではパンデミックの開始から2021年上半期までで50万人の新しいデジタル消費者が参加した。

インターネットユーザーの97%はデジタルサービスの消費者であり、デジタル利用率はASEAN内で最も高くなっている。

(source: E-Conomy 2021)

デジタル経済は年率16%で成長へ

シンガポールのデジタル経済は、2020年に停滞後2021年に前年比35%と急回復した。この増加は、E-コマース、フード関係の革新による45%の成長が牽引している。

フィンテックも引き続き注目され、シンガポール金融庁から4社に対してデジタル銀行のライセンスが付与されている。デジタル経済は年率16%で成長し、2025年度の流通総額は 270億ドルに達する見込みである。

(source: E-Conomy 2021)

フィンテックサービスの利用率が上昇

シンガポールのデジタル事業者のうち38%は、デジタルプラットフォームがなければサバイブできなかったと回答している。

フィンテックサービスは重要な要素となりつつあり、89%のデジタル事業者がデジタル決済を、37%はデジタル資金調達を採用している。

さらに、多くの事業者は顧客との関わりにデジタルツールを利用し始めており、43%が次の5年間のうちにデジタルマーケティングツールを利用するつもりだと回答している。

(source: E-Conomy 2021)

投資流入増加で複数のユニコーン誕生

投資活動については、近年を上回る傾向が続いており、2021年度前半に力強く回復した。

複数の企業が新たにユニコーン(企業価値10億ドル以上の企業)となり、引き続きASEANのデジタル・ハブとして魅力的な国となっている。コロナを契機としデジタルサービス業界に対する投資意欲は引き続き旺盛である。

(source: E-Conomy 2021)
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