シンガポールのデジタル・エコノミーの状況に関する報告書。

2021年10月28日にシンガポール金融庁(MAS)が最新のマクロ経済報告(Macroeconomic Review)を公表しました。

この報告書のうち、シンガポールにおけるデジタルエコノミーの状況に関する分析を紹介したいと思います。

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シンガポールにおけるデジタル・エコノミーの進展

コロナ・パンデミックの影響もあり、世界中でデジタル革命が進行しており、ここシンガポールでも急速に進展しています。

報告書によると、eコマース、ロボティクス、R&Dに関連したデジタル化とイノベーションにより労働生産性が向上しているとのこと。

シンガポールでは特にeコマース及びR&Dが拡大しており、これにより生産性向上、デジタル経済の飛躍に貢献しています。

シンガポール・デジタル利用率

少し古いデータですが、モバイルデバイスやインターネットの国民利用率を表す、国際通貨基金(IMF)が公表する2016年度のデジタル利用指数(Digital User’s Index)においては、シンガポールは香港に次いで、日本や韓国と並ぶアジアのトップティアを維持しています。

2016年からの5年間で世界中でモバイル利用率が上昇しているのは間違いないので、2021年時点では、多くの国がIndex数値を高めていると思われます。

シンガポール・ロボット利用率

国際ロボット協会(International Federation of Robotics)が公表する2018年度ロボット利用率(Robot density)に関するランキングでは、シンガポールは韓国に次いで世界2位となっています。

ロボット利用率(Robot density)は、従業員1,000人に対するロボット数の割合を表すもので、韓国が70、シンガポールは40、世界第3位の日本は30となっています。

シンガポールにおけるロボットの70%が半導体産業で利用されているとのことです。

シンガポール・Eコマースの概況

シンガポールのGDPにおけるEコマースの割合も、2017年度の0.3%から0.7%へと急速に増加しています。

EコマースがGDPに占める割合を国別で見ると、1位の中国が7%、2位の韓国が4%、日本は2%であり、0.7%のシンガポールは伸びしろがかなりあると言えそうです。

実際、Eコマース産業のの年間増加率は、2020年度に30%拡大しており、これは世界的に見てもインドネシア(50%)、インド(40%)に次ぐ3位となっています。

 

シンガポール・R&D支出の状況

シンガポールのGDPに対するR&D比率は、2%程度と高い水準になっています。

なお、GDPに対するR&D比率は、2020年度で日本が世界1位となっており、特許申請数も米国や中国を差し置いて日本がトップとなっています。

ただし、(日英欧に同時申請した)特許申請数は、国の経済規模を比例してかなり少なくなっています。

さいごに

データが示すとおり、シンガポールはeコマースやR&Dが拡大しており、デジタル・エコノミーのさらなる成長が見込まれます。

また、シンガポールでは、デジタル化に関する各種のインセンティブ(中小企業向けの「SME GO Digital」、「Start Digital Pack」、各ステージに合わせたソリューションやトレーニングを提供する「Industry Digital Plan」、政府補助金である「Productivity Solutions Grant」など)を提供しており、シンガポールで事業を行う企業は有利にデジタル化を促進することができます。

一方で、デジタル化には雇用ミスマッチ格差拡大などの弊害も生じますが、シンガポールではスキルアップのためのトレーニングを提供したりと、すでに弊害に対する対策も進められています。

経済規模が小さいシンガポールでは、ASEANの先進都市を目指すべく、デジタル化経済で最先端を走ることが宿命と言えます。

各種データは実際にこれらを裏付けており、引き続きアジアのR&D拠点デジタル実験場としての立ち位置は不動ではないでしょうか。

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