今回はシンガポールにおける外国税額控除の取扱について解説したいと思います。
外国税額控除とは、外国で納付した税額について、国内の税務申告上の税額から控除する制度です。
所得の種類によっては、シンガポール会社が外国で稼得する所得について外国で源泉されたあと、シンガポールにて再度課税されてしまうため、2重課税となってしまいます。
この2重課税を排除するために、シンガポールにおいて外国税額控除が認められています。
2重課税控除(Double Tax Relief: DTR)
租税条約(Double Taxation Agreement: DTA)を締結している国との間において発生した外国税額について、シンガポールの税額計算において税額控除することが認められています。ただし、その控除額はシンガポールの税率(17%)を限度とします。
なお、居住会社の判定は、事業の管理とマネジメント(the control and management of its business)がシンガポールで実行されているか否かで判断されます。実質的な状況を勘案して判断されますが、一般的には経営の重要な意思決定を行う取締役会がシンガポールで行われているか否かが判断基準となります。
片務的税額控除(Unilateral Tax Credit: UTC)
2009賦課年度より、租税条約(DTA)を締結していない国からの源泉所得についても、税額控除が認められています。
外国税額控除を利用するための条件
外国税額控除を利用するためには、シンガポール会社は以下の要件を満たさなければなりません。
・外国において所得に対する税が支払われている(または支払予定である)
・シンガポールにおいて課税対象となる所得に関する税額である
外国税額の控除額は?
シンガポールの課税計算上控除可能な税額は、以下のうち低い方の金額となります。
2. 外国所得に関してシンガポールにおいて課税される税額
例えば、外国で稼得した所得について源泉された税率が20%である場合、その差額(3%)分については、控除が認められません。
プーリングシステム(FTC pooling system)
外国税額控除は「所得ごと(source-by-source)」及び「国ごと(country-by-county)」に税額を計算することが原則ですが、2012賦課年度より、プーリングシステム(FTC pooling system)が選択できるようになりました。
簡単にいうと、外国税額を所得ごと、及び国ごとに個別に判定することなく、合計額をまとめて控除できるという制度です。
プーリングシステムを用いた場合の控除税額は、以下のうち低い方の金額となります。
2. プール対象の外国所得で、実際に支払った外国税額
ただし、プーリングシステムを利用する場合は、外国税額控除の条件に加えて、対象となる外国の最高税率が15%以上である必要があります。
外国税額の申告
外国税額控除の申告は、法人税の申告時に法人税申告書Form-C上で行うことができます。簡易申告書であるFormC-Sでは外国税額控除を利用することはできないため留意が必要です。
外国税額控除を申告する際に、追加で提出すべき資料はありませんが、以下の資料を準備し、税務当局の問い合わせの際に応えられるよう、準備しておく必要があります。
- 外国税額控除利用にあたり保持すべき情報
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・外国税額の支払国(jurisdiction in which foreign tax was paid)
・所得の性質(Nature of the income )
・提供した役務の内容、外国税額の支払い国にある恒久的施設(PE)に由来するものか
・納税者の名称
・源泉税領収書の日付
・所得の税控除前金額、源泉税率、外国通貨による金額とシンガポールドル相当額
・租税条約による場合は、租税条約の関連条文
・源泉税領収書
以上、シンガポールにおける外国税額控除について解説しました。2重に税金を支払うことがないように、税額控除を利用しましょう。
当該情報は執筆時現在に公表されている法令・ガイドライン等を参照しています。本記事に記載された制度は、法令・条例・通達・税制の変更・改正等により、改廃が行われている可能性があります。従いまして、特定の目的利用及び専門的な判断にあたっては、会計・監査・法務・税務・労務等の専門家にご相談頂くようお願いいたします。本資料に基づいた行為(不行為)につき、一切の責任を負いません。
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