「気がついたら、メールボックスが未読メールで溢れている。」
「次から次へと仕事が降ってきて、息付く暇もない。」
「自分が一体長いキャリアの中で何をやりたいのか、わからなくなっている。」
世の中の多くの仕事人がそんな状況に置かれているのではないでしょうか。
そんな悩めるビジネスマンにオススメなのが、
「エッセンシャル思考➖最小の時間で成果を最大にする」
著者はシリコンバレーでコンサルティング会社を経営するグレッグ・マキューンという人。
本書は、シンプルを突き詰めて幸せを最大化するというミニマリスト界隈ではバイブル的な存在。
すでにベストセラーなのでご存知の方も多いと思いますが、自分自身、この本のおかげで大分時間管理の意識変革が進んだので、ここにレビューしたいと思います。
エッセシャル思考とは?
エッセンシャル思考とは、「正しいことをやり遂げる技術」であり、 人生を「本質的要素」だけに織り込むという精神的態度のことといいます。
自己啓発本やライフハック系の書籍では、
「より多くのことをやりとげる技術」
に関するテクニックが多いですが、普通の人が多くのことをやろうとすると、結局すべてが中途半端でストレスフルに。
一方、「エッセンシャル思考」は、
「自分にとって最も重要なことに集中することで、本当に必要なことをやり遂げるための術」
を伝授してくれます。
本書で紹介されているデザイナーの言葉が非常に明察。
世の中の大半のものはノイズ、本質的なものはほとんどない。そうしたノイズを取り除き、貴重な本質を取り出すことが良いデザイン。
この洞察は、あらゆる物事に共通する真理ではないでしょうか。
仕事を引き受ける際のポイント
向上心が強い人は、周囲からの期待などのプレッシャーがあだとなり、
「あれも、これも」
と手を出してしまいがちでしょう。しかし、それでは全て中途半端になってしまっています。
かの経営学の神様、ピーター・ドラッカーはプロフェッショナルについてこう表現しています。
プロフェッショナルとは、「ノー」といえる人、「これは自分の仕事ではない」と言える人。
本当のプロフェッショナルであるなら、「正しい仕事」だけを引き受けなければなりません。
とはいえ、
「何が正しいことか?」
を判断するのが難しいのも事実。
しかし、本書では仕事を引き受ける際のポイントを教えてくれます。
・自分が今やれることの中で一番重要か?
・本当に重要でないことは断る。
・流されない。少数の本質的なことだけを選び取る
とにかく、引き受ける前に仕事の達成可能性や、自分にとっての意味について十分に考える、その時間が大事といえそうです。
特に、
「優先順位を決めること」
が大事であると説きます。
周囲の期待に応えて何でもかんでも引き受けてしまう人。
優秀な仕事人にこのような傾向が多いと思います。「デキるプロフェッショナル」という自負・プライドがありますし、何より仕事をバリバリこなすのが好きなのだと思います。
しかし、本書では、このようなバリバリ系仕事人も一刀両断。
自分で優先順位を決めなければ、他人の言いなりになっているだけ
このような働きすぎる人は活発に見えますが、それは単なる見せかけにすぎないといいます。本当は自分が何一つ選べないから、全てを引き受けている。
たしかに、頼まれた仕事、期待されている仕事に対して「No」というのは、かなりのエネルギーを使いますね。
このような、「Noと言えない優秀な仕事人」は、次の点を理解しなければなりません。
・ある種の努力は他の努力より効果が大きい。
・大多数の物事は価値がなく、ごく少数の物事に莫大な価値がある。
ほとんどの仕事は、別に他の人がやってもいいもの。
自分自身が本当に重要なことに「YES」というため、その他全てに「No」といわなければなりません。
本当に大事なことだけを見極める方法
では、本当に大事なことを見極めるにはどうすればいいでしょう。
死を迎える人が最後に後悔するのは、
他人の期待に合わせるのではなく、自分に正直に生きる勇気が欲しかった
ことだそうです。そのため、幸せに人生を全うするためには、
自分に正直に生きること
これこそが大事です。そのために必要なことは次。
・時には魅力的なチャンスも切り捨てること
・人生をシンプルにして本当に重要なことだけに集中すること
そして、「自分にとって本当に大事なこと」を見極める必要があります。
そのためには、以下の問いについて厳しい基準で判断し、「絶対やりたい」か「やらない」の2択で判断することが有効です。
・自分は何が一番得意?
・世の中のニーズで貢献できるのは何?
本質目標を見つけること
著者は、エッセンシャル思考を達成する要素として、「本質目標」という概念を提唱します。
偉い先生やコンサルタントはよく、
「ビジョンやミッションを持つことを大事」
と言います。ところが通常それらは、漠然とした概念的なもの。
「本質目標」は、そのようなビジョン・ミッションより刺激的で実行可能な、具体的目標です。
本質目標の素晴らしいところは、その後の無数の決断が不要になる点です。
例えば、
「弁護士でなく医者になる」
と決めれば、弁護士になるためのその後の余計な検討は一切無くなります。
ただし、本質目標の決定は簡単ではありません。
他の選択肢を諦めるトレードオフや自分に対する深い洞察が必要になります。
ただし、いったん本質目標が定まれば、遥かに意味のある人生が送れるはずです。
拒否する技術
周囲の期待、プレッシャーに応えて引き受けてしまうという経験は誰にでもあること。
ところが、大抵そういう場合は一瞬の満足の後に、深い後悔が押し寄せてきます。
本書では文豪のヘミングウェイのこの言葉を引き合いに出します。
勇気とはプレッシャーに負けない品格のことだ
恐れずに、「No」ということ、それこそが勇気と品格のある人です。
本当に重要なことをやるため、本質的ではない依頼は断るべき。
まわりの人は、何でも引き受けてしまう「いい人」よりも、「No」といえる勇気ある人を尊敬します。
みんなにいい顔をして一時の好印象を得ることより、上手に「No」ということで敬意を得ることに集中しましょう。
断る際のテクニックとして、以下の方法が紹介されています。
・代替案を探す
・予定を確認しておりかえす
・自動返信メール
・どの仕事を後回しにするか
・冗談めかして断る
ただし、そもそも断るくらいなら、関係を持たないことが大事。
相手の都合を考えずに、自分の問題に巻き込んでくる人は、時間とエネルギーを吸い取られるだけなので、近づかないようにしましょう。
人生で達成すべきこと
将来自分の人生を振り返ったとき、どこにでもありそうな「達成リスト」が並んでいるより、「自分にとって意味のあること」を一つでも達成したと確信する。
そんな人生を送りたいものです。
最後に、本書で引用されているアメリカの詩人メアリー・オリバーの言葉が感動的ですのでここに残したいと思います。
教えてください。あなたは何をするのですか。その激しく、かけがえのない一度きりの人生で。