シンガポールの会計・財務アドバイザリー

シンガポールにおけるストックオプション課税。日本との違いは?

ストック・オプションとは

ストックオプションとは、特定の期間の間、従業員が予め定められた価格で会社の株式を購入することができる権利をいいます。

例えば、株価が上昇しているタイミングで、低い価格に決定された株価で購入することができれば、ストックオプション行使による株式の取得と、その後マーケットでの売却により差額利益を享受することができます。

日本におけるストックオプションの課税

日本におけるストックオプション課税は、税制適格ストックオプションと税制非適格ストックオプションで取扱いが異なります。

ある特定の要件を満たしたストックオプションは税制適格ストックオプションとして税務上有利な取り扱いをすることができます。

具体的には、ストックオプションを行使し、株式を取得した時点では、課税されず、実際に株式を売却して現金を得たときに課税対象となります。そして、当該売却益は譲渡所得に分類されますから、20.315%(所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%)の税率が適用されます。

一方、税制適格とみなされない場合は、ストックオプションの権利行使時に、時価と権利行使価格の差額が給与所得として課税されてしまいます。給与所得は最高税率55%(所得税45%、住民税10%)ですので、所得金額が大きくなる場合は不利となります。また、株式売却時にも、売却価格と権利行使時の時価の差額に対して譲与所得として課税されます。

なお、付与対象者や権利行使期間が税制適格要件として定められています。

シンガポールにおけるストック・オプションの課税 

対象となるストック・オプション

シンガポールにおける雇用に関連するストックオプションについて、その行使益が課税対象となります。そのため、駐在員がシンガポールへの赴任前に付与されたストックオプションは対象外となります。

また、シンガポールでは原則として資産の売却益(キャピタルゲイン)は非課税ですので、ストックオプションを行使して得た株式を売却した際の利益については非課税となります。

ただし、トレーディングや事業とみなされる場合は事業所得として課税対象となるため注意が必要です。

課税される時期

シンガポールでは、ストックオプションの権利行使時に課税されます。本来ストックオプションを行使しただけでは株式が手に入るだけで現金はなく、納税資金がないということになりますが、上記で触れたように、シンガポールにおいてはキャピタルゲイン課税がなく株式売却で資金が入手できた際は非課税となる関係から、権利行使時の課税となっていると考えられます。

日本人の帰国時の留意事項

シンガポールでは、外国人向けに「みなし行使ルール(Deemed exercise rule)」という制度を定めているため注意が必要です。これは、外国人がシンガポールで付与された未行使のストックオプションを有する場合、権利が行使されたとみなされて課税所得になる制度です。帰国時に税金関係を精算するタックス・クリアランスで課税所得に含まれます。

Deemed exercise rule -IRAS

課税所得の計算方法は以下となります。


課税所得 = A ▲ B

Aは、いずれか遅い日の時価

・シンガポールにおける雇用終了日の1ヶ月前の日

・ストックオプションの付与日

Bは、ストックオプションの権利行使価格


ただし、帰国後に権利行使した結果、上記で算定した課税所得よりも少ない場合は、還付請求することができます。ただし、「みなし行使ルール」が適用されてから4年以内という期限付きなので注意が必要です。

以上、日本とシンガポールにおけるストックオプション課税の概要となります。

まとめると、以下のようなかたちになります。

ストックオプションは金額的な影響も大きくなりがちですので、実務にあたっては専門家にご相談ください。

参考情報

Stock Option -IRAS

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