シンガポールの居住者ステータス-申告前にまず確認しよう

居住者の判定はなぜ必要か?

個人所得税の申告にあたり、はじめに確認しなければならないことが居住者ステータス(Residency Status)です。

居住者ステータスは、日本を含む多くの国において取り入れている概念であり、納税者を居住者と非居住者に区分して、税務上別の取り扱いをするものです。

居住者ステータスによって、課税所得の計算方法や税率が異なってくるため、シンガポールで納税する人は、ご自身がどちらの居住者ステータスに該当するか注意深く検討する必要があります。

居住者と非居住者の定義

居住者(Resident)及び非居住者(Non-Resident)のそれぞれの定義は次のとおりとなります。 

シンガポール居住者

  • シンガポール国籍を保有し,シンガポールに居住する者
  • シンガポール永住権を保有し,シンガポールに居住する者
  • 永住権を保有していない外国籍であってもシンガポールでの滞在が1暦年において183日以上の者
  • 3暦年以上に渡って、シンガポールに滞在もしくは雇用されている者
  • 2暦年以上に渡って、連続して183日以上シンガポールで雇用される者

シンガポールにおける非居住者

滞在日数が182日以下となる場合は非居住者に該当しますが、所得税の計算上、非居住者は以下の2パターンに分類されます。

  • 61日以上182日以下シンガポールに滞在(仕事も含む)する者
  • シンガポール法人で働いていた日数が60日以下の者

居住者ステータスの相違点

居住者ステータスに関する主な留意点は以下のとおりとなります。

  1. 税率が異なる
  2. 所得控除(Tax Relief)が使えない

①税率の違い

居住者と非居住者では、税率が異なります。居住者については課税所得の金額に応じた累進課税率が適用されるため、非居住者に比べて税率が低くなります。

一方、非居住者については、累進課税率で算定された税額と、課税所得に15%の一律税率を乗じた金額のいずれか高いほうの金額となります。

なお、非居住者のうち、シンガポールに61日~182日滞在する場合において納税義務が発生しますが、滞在が60日を超えない場合は、シンガポールにおける申告は不要です。

ただし、シンガポール法人の取締役報酬や専門家報酬などについて、別途異なる料率が設定されています。→シンガポールの個人所得税率と日本の税率との比較

②所得控除(Tax Relief)の取扱い

主に特定の制度利用の促進や納税者の負担軽減などの政策的配慮から、課税所得から一定額を控除できる所得控除(Tax Relief)が規定されていますが、所得控除の利用が認められるのは居住者のみとなります。

所得控除の内容についてはこちら参照→OOO

さていかがでしょうか。

居住者ステータス

滞在日数 取扱い
居住者 •累進課税率が適用される。
•税額控除(Tax Relief)が利用できる。
非居住者 61日~182日の間シンガポールに滞在(就業も含む) •15%の税率及び累進課税率で算定された税額のうち、高いほうの金額
•税額控除(Tax Relief)は利用できない。
60日以下の間シンガポールに滞在 60日以下の短期間の所得については課税対象外。
但し、以下の場合は課税される。
①会社の役員(director of a company)、芸能人(public entertainer)、専門家(professional)
②シンガポール国外にいることが偶発的な事象による(この場合、シンガポール国外で稼得した所得についてもシンガポールで課税)
•税額控除(Tax Relief)は利用できない。

ざっくりいうと、原則、外国人には高い税率で税金を払ってもらうけど、シンガポールに年間の半分以上滞在してコミットしてくれたら、所得もたくさん稼いでいるだろうし、シンガポール人と同じ税率で税金を計算してあげる、というような制度と考えていただければいいかと思います。

税率の有利な居住者ステータスとなるようにシンガポールの滞在日数に留意することも必要かもしれません。

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